DADDY FACE SS 『不死咎人(4)』
by Sin



 場所は再び戻って・・草刈家では、あれから1時間もの間、延々と母娘のスキンシップが続けられていた。
「ほらほら〜虎雄くんとはどこまでいっちゃってるのかなぁ? 白状しなさいよ〜♪」
「ちょ、ちょっと美貴ちゃんっ! やんっ、そんなトコ触らないでよっ!!」
「だ〜め。ちゃんと答えるまでは許しませ〜ん♪」
「きゃうんっ! だ、ダメだってば〜」
 色々とイタズラを交えた美貴の攻撃に美沙は顔を真っ赤にして逃げようとするが、どうしても逃げられない。
 いつしか美沙の衣服はすっかり乱れてしまっていた。
「フフフ・・これはなかなか・・」
 じゃれ合う母娘2人の様子を見ていた冴葉はそう言うと、どこからともなくビデオカメラを取り出し、余すところなくその様子を撮影している。
「ちょ、ちょっとぉ、なに撮ってるのよぉ! あっ、み、美貴ちゃん、そこダメッ!」
「フフ・・ボスと美貴さんの純愛DVDを作成し、販売しますので。ああ、美貴さん、もっと激しくやってしまって下さい」
 怪しく微笑んで言う冴葉に思わず冷や汗を流す美沙。だが美貴はにっこりと微笑むと言葉通りに更に激しくイタズラを始めた。
「や、やだ、美貴ちゃん、ダメ〜〜!」
 からみついてくる美貴の拘束を必死に抜け出そうと美沙が藻掻いていたその時だった。

「た、ただいま・・・」
「お邪魔します」
 唐突に扉が開いて、鷲士と虎雄が部屋に帰ってきた。
 そしてその視線は・・・

 激しく乱れた美沙の服装。そしてその美沙を抱きしめてイタズラをしている美貴。更にその様子を撮影している冴葉。
 鷲士達2人の頭の中でこの状況が計算され・・そして導き出された答えは・・

「あ、ご、ごめん・・取り込み中だった・・みたいだね・・と、虎雄くん、ちょっと席外そうか」
「は、はい・・」

 慌てて出て行こうとする2人。
 だが・・

「か、勝手に変な事想像するな〜〜〜っ!!」

 ドガバキッ!

「ぐえっ!」
「ぐは・・・っ・・」

 真っ赤になった美沙が部屋の物を次々と投げつけ、直撃を食らった鷲士達はその場にぶっ倒れた。

「あ・・えっと・・・み、美貴ちゃんの所為だからね!! ちょ、ちょっと虎雄! 大丈夫?」
 当たり所が悪かったのか、すっかり目を回している虎雄を慌てて揺さぶる美沙だったが、目を覚ます様子はない。
「あ〜ん、もう。2人ともくずりゅーなんだから、このくらい避けてよ〜〜〜!!」
 そんな美沙の様子を、美貴と冴葉は笑いながら見つめていた。

 そして・・30分後・・

「あははは・・なんだ、そうだったんだ・・」
 状況を説明され、そう言って笑う鷲士に美沙は真っ赤になってうつむく。

「それにしても・・美沙・・さっきのは効いたぞ・・」
「う・・ご、ごめん・・・」
 そう言われて小さくなった美沙に虎雄はポンポンとその頭を撫でて「ま、いつものことか」と言って笑った。

「それはそうと・・・」
 ふと、鷲士の表情が曇る。
「どうしたの、しゅーくん?」
 急に変わった鷲士の表情に心配げな美貴。
「帰ってくる途中だったんだけど、なんかとんでもないのと会っちゃって・・」
「とんでもないもの?」
「・・・やっぱり、化け物って言うのかな・・ああいうの・・」
 その鷲士の言葉に目を輝かせて美沙が飛びついた。
「化け物!? ねっ、ねっ、どんなの? 怪獣とか、妖怪とか・・」
「・・・なんて言ったらいいのかな・・人の姿はしてるんだけど・・ゼリーみたいな感じで、赤くて透き通ってて・・」
「うげ・・スライム・・?」
 思わず顔をしかめる美沙。
 ああいう物はあまり好きではないらしく、先程までの期待に満ちた表情がいくらか薄れている。
「たまたま悲鳴が聞こえてさ、行ってみたらそいつに女の人が襲われてて・・」
「女?」
「それで・・どうしたのかな、虎雄?」
 女の人という言葉に美貴と美沙が敏感に反応する。
 思わず額にでっかい汗が浮かぶ鷲士達だったが、気を取り直して話し出した。
「ほっとくわけにもいかなかったから、俺達で助けたんだけど・・たまたまその側を通りかかった犬がいて・・」
「犬!? なんで? 犬って普通、そんなのいたら警戒して吠えまくるんじゃ・・」
 美沙の疑問に鷲士も頷く。
「僕もそう思う。でもあの時、犬は全く警戒していなかった。それどころか見えてさえいなかったみたいだよ。全く気付かずにすぐ横を通り過ぎようとして・・あの化け物に襲われた」
「そ、それで!?」
「・・急に化け物の身体が崩れて、ドロドロになったそれが犬に降り注いで・・」
「う、うん・・・」
 鷲士の言葉に悔しそうな表情を浮かべる虎雄。その様子に美沙も心配げな表情を浮かべた。
「それで・・どうなったの?」
「・・・化け物に包み込まれた犬の悲鳴がしばらく響いて・・化け物が地面に染み込むみたいに消えると、犬は・・骨になってたよ・・ほんの1分ほどのことだったんだけどね・・まるで何年も経って白骨化したみたいに・・」
 その言葉に、美沙達の顔に緊張が走る。
「悔しいよ・・いくら野良犬って言っても、目の前で助ける事もできずに化け物に襲われるのを黙って見ているしかなかったなんて・・」
「虎雄・・」
 握りしめられた虎雄の拳をそっと美沙の手が包み込む。
 そんな2人の様子を鷲士はなんとなく複雑な思いで見つめていたが、その時、今まで黙って話を聞いていた冴葉が口を開いた。

「ボス、もしかすると、鷲士さん達が出会ったものというのは、あの事件の・・・」
「あの事件?」
 突然の冴葉の言葉に鷲士は首を傾げる。
 そんな鷲士に頷くと、冴葉は以前から続いている女性の行方不明事件と、男性の白骨化事件の事を話した。

「・・・だとすると、僕らが出会ったあの化け物は・・」
「かもしれません・・」
「あ、でもさ。俺達があったのは女の姿をしてたぞ?」
 虎雄が言ったその時だった。不意に美沙の顔色が真っ青になる。
「どうしたんだ、美沙?」
「う、うん・・やな事考えちゃって・・」
「やな事?」
「何を思いついたの?」
 美貴の言葉に美沙は躊躇うようにうつむいて唇を噛んでいたが、やがて顔を上げると、「・・冴葉、行方不明になってる人達の写真って・・ある?」と聞いた。
「はい、ここに」
 そう言って冴葉が取り出した写真を美沙はテーブルの上にずらりと並べた。

「これは?」
「最近続いている行方不明事件の被害者の写真よ。それで・・なんだけど・・」
 再び躊躇うように写真を見回していた美沙だったが、意を決して口を開いた。

「虎雄、鷲士くん。この中に、その化け物って・・いる?」
「えっ・・・え〜っと・・・」
「・・・あ、師匠、この人!」
 そう言って虎雄が指さした写真を見ると、確かにそこにはあの化け物と同じ姿が写されていた。
「確かに・・この人だね・・でもこれって・・・」

「考えたくない事なんだけど・・ね・・・」
 真っ青になって口を開く美沙。その声も震えている。

「多分、その化け物の本体・・それに取り込まれた女性を自分の分身として彼方此方に放っているんじゃないかと思う・・」

 美沙の言葉に、その場にいる全員が言葉を失った・・







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