オートマチックインターセプター SS 『二心同体生活』 第1話
by Sin



何とか屠屡座に勝利した摩鈴と日向は、お台場某テレビ局の屋上に帰還した。
摩鈴は破壊神召還の影響で疲労困憊し、もはや息も絶え絶えになって屋上にその身体を横たえた。
「はぁ…はぁ…ま、待ってて、日向。今、分離するから……」
そう言って月輪杖をかざそうとした摩鈴だったが、持ち上げることすらできなかった。
「ちょ、ちょっと待ってよ摩鈴くん! 今の状態で分離なんてしたら、今度はあなたの命が!」
再び月輪杖に手を伸ばそうとした摩鈴を慌てて玉麟が止めた。
「で…でも、このままじゃ……日向だって……」
「私、絶対に今は分離しないからね! 私が助かったって、摩鈴が死んじゃったら、意味ないじゃない!」
下から睨み付けてくる日向を摩鈴はじっと見つめていたが、やがて諦めたのか、大きく溜息をつくと
日向に笑いかけた。

「分かったよ、日向。じゃあ、しばらくこのままで……」
「摩鈴の体力が戻るまでずっとだからね!」
「う…あ、あのさ、ずっと一緒ってことになると……色々……困るんだけど……」
そう言って真っ赤になる摩鈴。
心がダイレクトに繋がっている日向にも、その摩鈴の考えは完全に伝わってしまっているので、同じように
顔を真っ赤に染めた。
「あう……と、とにかく! 絶対に摩鈴の体力が戻るまでは離れないんだからね!!」
「わ、分かったよ……」

その日から、摩鈴と日向の、二心同体生活が始まった。

もちろんその日の夜からトラブルは山積みになったが…

「おかえり、摩鈴! ………って……日向ちゃん!?」
「あ、おばさん、ただいまー」
「え、えと……あの……?」
「桃子、私から説明するから、とりあえず落ち着いて」
パニックになりかける桃子を玉麟がなだめて、摩鈴達はとりあえず家に入った。

「……と、いう訳なの」
「………はぁ……現実に見ても、まだ信じられないわ……」
「それは僕も一緒だよ……まさか日向と融合するなんて……」
「でも、嫌じゃないけどね」
豪快に笑いながらそういう日向に摩鈴も苦笑いを返した。

「摩鈴、お風呂の用意できてるわよ」
「あ、う、うん……」
「どしたの? 入らないの?」
「え、だ、だってさ……」
躊躇うようにうつむいた摩鈴は日向とばっちり視線が合ってしまい、顔を真っ赤にした。

なんだかんだと揉めたが、結局は入ることになってしまった摩鈴は、タオルで日向の目を隠そうとした。
「ちょっとちょっとぉ、こんなの巻いてたら、鬱陶しいじゃないの!」
「だ、だって……」
「あのねー、摩鈴の裸くらい一回見てるんだから、何度見たって一緒だって!」
日向のその言葉に摩鈴は思わず真っ赤になったが、言葉とは裏腹に、日向の顔も真っ赤になっていた。
「なに赤くなってんのよ……そんな顔されると、こっちまで気になるじゃない…」
気まずい沈黙が二人の間に流れるが、やがて……
「わ……分かったよ……入るよ……」
ようやく風呂に入ることができた摩鈴だが、トラブルはそれで終わりではなかった。

身体を洗えば……
「きゃうっ! ま、摩鈴っ!石鹸が目にしみるっ!」
「あ、ご、ごめん」
慌てて洗面器に水を汲んでそこに日向の顔を近づけるが……
「うぇぇ、口の中が泡だらけぇ」
「え、えっと、じゃあ……」
迷った挙句に摩鈴は手で水をすくって、日向の口に含ませた。
「ブクブクブク……ぷっ、はぁ……」
「大丈夫?」
「い、いちおーは、ね」
「はぁ……これからが思いやられるなぁ……」

湯船に浸かれば……
「ゲホ! ゴホ! ま、摩鈴、溺れるぅぅ!!」
「わわわっ、日向っ!!」


いくつものドタバタ劇を繰り返し、結局落ち着けたのは、二人とも眠りについてからだった。





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